音声ケーブルの再考察

今回は音声ケーブルの再考察についてです。
検証した結果、GS-4からMS202シリーズに変更しました。

さらに、ヘッドホンケーブルもMS202に変更しました。

もっと早くに出す予定でしたが
MS202の検証に時間がかかったため、すっかり遅くなりました。

はじめに

私の好むものは基本オーディオ的にはつまらないです。

今回選んだケーブル「MS202」ですが、
オーディオチックなハイスピード感も高域を明るくした高音質感もありません。

私は音楽が主役でありオーディオ機器は黒子と考えている為、
オーディオ的な音に全く魅力を感じないためです。

故に、オーディオ好きの方が聴くと
「何?このつまらない音」という風に感じると思いますので、
それを踏まえて各自で検討して頂ければと思います。

また、やれるだけの検証事を行ったため
かなり長い内容となっております。

時間が有る時に読んで頂ければ幸いです。

きっかけ

プラグの検証もやったので、
ついでにケーブルもやろうと思ったのがきっかけです。

ケーブルはある程度自分で固めましたが、
良い機会と思いましたので…。

今まで検証したこととリファレンス

今は音声ケーブルは以下のもので固めています。

  • ヘッドホンケーブル:UL3265 22AWG FUJIKURA製
  • ラインケーブル:カナレ GS-4

2018年1月検証直前のケーブル群

過去の記事を消してしまったので、
今まで検証したことを以下にまとめます。

線の材質

ヘッドホンは至って普通の線材、
ラインケーブルはOFC(カナレGS-4がOFCのため)です。

極力普通の導体を使っています。

以下のように線材を変えてヘッドホンケーブルを作って試した結果、
普通のケーブル(UL3265線 22AWG FUJIKURA製)に落ち着いたためです。

UL3265 22AWG ケーブル

102SSC 22AWG ケーブル

PCOCC-A 22AWG ケーブル

MIL線 銀メッキ テフロン被膜 22AWG ケーブル

102SSC、MIL線(銀メッキ テフロン線)、PCOCC-Aは
高域が賑やかで下の音を殺してしまうため
「私が音楽を聴くためには」使っていません。

多くのオーディオ好きの方が好まれる、音を明るめの方向に持っていきたいのであれば、
テフロン銀メッキ線か102SSC導体と言ったところでしょうか。

線の太さ

最適な太さを検証し、22AWGとしています。

20AWGだと音の厚みがましますが、ローパスがかかったように音が鈍くなったため、
これ以上太くしてはNGと言うのが見解です。
(ヘッドホンケーブルもラインケーブルも)

検証用20AWG MIL規格ケーブル

線の形状

試した結果、ラインケーブルはシールド線、
ヘッドホンケーブル等は四つ編みさせています。

メーカー

カナレを一番信頼して使っています。

ベルデン(88761)、ノイマン、モガミも試したのですが、
ベルデンは「ガサガサ感」が、ノイマンは「ヌタ感(マイクケーブルだから仕方が無い)」が、
モガミは「強く出てるさわやかな感じ」がピンと来なかったためです。

Procable Belden 88761 ヘッドホンケーブル

Procable ノイマン線 ヘッドホンケーブル

MOGAMI 2534 XLRケーブル(自作)

ベルデンのMILスペックのデジタル同軸ケーブルを買って
デジタルケーブルを作った時も同じ「ガサガサ感」があったため、
これらの音が各ケーブルメーカーの特徴と判断しています。

アナログケーブルとデジタルケーブル失敗作(ベルデン MILスペック)

カナレは大須で22AWGのシールド線を探していた時に、
GS-4が22AWGであったから使っています。

上記のメーカーのように違和感を感じなかったのが
使い続けている理由です。

さらにHDJ-X10を改造して最適に鳴るようにした時
ケーブルの送る情報量にヘッドホンなどの機器が耐えられていないことが分かり
十二分な情報量を送っている事を確認できたため、より信頼して使っています。

検証候補

以上のことから、一番信頼の置けるカナレに絞りました。

今回検証した線は以下の通りです。

GS-6はラインケーブル完成品に使われているので、
もしかすると20AWGで十二分に音が出るのではという可能性があったためです。

MS202はカナレが「α-Fi」という言葉を打ち出して音質を重視したと言うものが
どれくらいのものなのか試してみたくなったため検証することとしました。

MS202の主立った特徴は以下の通り。

  • 線径AWG25
  • 中心0.18mm 周囲0.08mm * 30という複合導体
  • 錫メッキ
  • 絶縁体:難燃架橋ポリエチレン
  • シース:難燃ビニル

私がヘッドホンケーブルに使っているケーブル(UL3265線)も
錫メッキ線と絶縁体に難燃架橋ポリエチレンを使っているので
複合導体と線径以外はよく似ています。

さて、複合導体は中心を太い線に周りを細い線で囲っているので
表皮効果の影響を考慮したものと考えられます。

多分、低域は電流が必要だから太く、
高域は表面にいくから細い線で囲って
導体の銅に電流が流れるようにしたとのかなと思います。
(あくまで推測です。)

錫メッキは経年変化による音の変化を抑えるために採用…。

よく考えて設計しているなとカタログをみて思いました。

その他の条件

機器は以下の通りです。
アクセサリー類は多いので割愛します。

機器 名称
ヘッドホン HDJ-X10 改造版
DAC RME ADI-2Pro + 特注ジャケット(※1)
ヘッドホンアンプ ハイエンドオーディオメーカー製 ヘッドホンアンプ(※2)

HDJ-X10 (内部改造済)

ADI-2 Pro with ハイブリッドケース

※1:今後、特注ジャケットは挟んでいる材を検証して
ドライカーボンから真鍮板に変更しました。そのうち材の検証で理由を記事にします。
※2:【2018.03.03】名称伏せました。

【2018.02.18】検証に使っていない機器の画像がありましたので、削除しました。

検証

GS-6

GS-6は音の厚みがます魅力がありますが、
太くなった影響で鈍くなっていることから、
微細な音が取りづらくなった為、見送りました。

GS-6 RCA ケーブル(自作)

太いので結構作るの面倒くさかったのですが…。

これは普通に売られているので、
買った方が安上がりでしょう。

【2018.09.16】写真の説明が間違っていたので修正しました。

MS202

MS202ですが、これが驚き。

謳い文句が「低音は太く、高音は伸びやかにバランス良く原音を忠実に伝送します」
とありますが、まったく嘘がないためです。

以下の通り、バランスケーブル、ラインケーブル、ヘッドホンケーブルにまで採用する至りとなりました。

バランスケーブルで使ってみる

MS202が2芯シールドだったため、
一旦バランスケーブルを作りADI-2 Pro → ヘッドホンアンプ間をつなげました。

MS202-2P バランスケーブル(自作)

ADI-2 Proはアンバランスとバランス同時に出力できたので
アンバランスにGS-4で作ったケーブルをつなぎ、
入力を切り替えて試聴しました。

(この機能に気づいて、今まで使っていたDACがメイン引退となりました。

「圧倒的性能」らしいので「相性」としておきます。)

使っているヘッドホンアンプのバランス入力は
メーカー曰く「バランス回路を通すから音質的には若干不利」とのこと。

このメーカーの思想は「回路は極力少なく」なので、
それを気にした発言です。

と言うわけで、MS202はハンデ有りの状態です。

この状態で切り替えて試聴…。

一聴すると普通ですが、聴いている内に

「あれ?空間が広くなっている。残響音がきちんと取れる。
多分高域がしっかり破綻せずに伸びているから取れている。

低域もしっかり出ている。過不足が全く無い。
それに音の出と引きが速い。

C成分によるレンジの最適化をやっていればすぐに見抜ける環境だから
ケーブルによるレンジの最適化はなさそうだ…。

これでこの応答性なら本当に速い。」

となり、予想以上でした。
ハンディ有りという状態でこの結果です。

気にいったので、色々と検証しました。

ラインケーブルを作る

本来バランスケーブル用ですが、
ラインケーブルもこれで行けないかと
ラインケーブルを作ってみました。

MS202-2P ラインケーブル(自作)

以下の2パターンで試しました。

  1. 芯線全てHOT (シールド線でGND)
  2. 芯線片方HOT、他方GND (シールド線もGND)

方法1は25AWG(0.16mm2)を2つ合わせると面積が22AWG(0.32mm2)相当になるので、
より良くなるのではないかと考えたためです。

しかし、音の厚みが増すものの鈍くなりました。

一方、方法2は鈍らずにキッチリ信号を送れることが確認できたので、
この方法でラインケーブルを作ることとしました。

結局、このケーブルは25AWGで最適に信号を送るように
キッチリ設計されていることが分かりました。

今まで検証で固めた線の太さが破られた瞬間でした。

やってみるものですね。ほんと。

MS202をヘッドホンケーブルにも使ってみる

25AWGでかなり優秀でしたので、
ヘッドホンケーブルにも使えないかと思い試しました。

まずはADI-2 Proのバランス変換ケーブルを作って
比較をしました。

比較用に作ったADI-2 Pro バランス変換ケーブル

ちょっとの構成変化で大差が無ければ
そこで検証を終わりにできるためです。

結果は、いつもの構成の方が音が鈍く
MS202-2Pの方が鈍くもならずやせることなく
きちんと音が出ていました。

よって、HDJ-X10用のケーブルを作りました。

ケーブル比較用に作ったHDJ-X10用ケーブル

比較は私が今まで良しとしてきた
UL3265 22AWG 四つ編み構成。

結果はHDJ-X10改造版が全く暴れずにキレッキレに鳴ってくれました。

逆に今までのケーブルはやや暴れ気味なのも分かりました。
ただ暴れが音楽と合うと面白い感じにはなります。

今後は四編みを音を荒れさせる為の技法の一つとして認識します。

この結果は結構驚きました。

したがって、ヘッドホンケーブルもMS202に変更です。

HDJ-X10用ケーブル 試作品

最後に

音声ケーブル系をMS202に全て変更という形になりました。
オールラウンドに使えたのは凄いなと思います。

流石カナレという結果でした。

カナレのケーブルが色々な方に使われ、
極地にたどり着いたと思われる方が
使われているのも頷けます。

試していて凄く楽しかったです。

おかげで現在、「はんだ」と「XLRコネクタ」も検証中です。
このケーブル使っているとそういうのも気になり始めます。

XLRコネクタ検証用に作成したケーブル群

はんだ組成の比較用に作成したケーブル群

はんだは「SR-4NCu」、「鉛入り」、「SN100C」、「Sn:96.5 Ag:3 Cu:0.5(SAC305)」、「Sn:99 Ag;0.3 Cu:0.7」を検証した結果、
鉛フリーの標準である「SAC305」という方向性で現在検証中です。

これらも検証終わり次第、記事にします。

おかしな音で変更するというより、CZ-1HDJ-X10のような
「まだ性能をひきだせる。よし。色々やってみよう!」という前向きな
気になり方です。

本当のシビアさを持ったケーブルと思います。

こういうシビアさを持ったものに出会えたのは幸運ですし、
やった甲斐があったなと思います。

そのせいでしょうか。

今のところHDJ-X10での検証のみですが、
はんだをある程度検討したケーブルで聴いていると
ADI-2 Proのヘッドホンアンプ部が
現在使っているヘッドホンアンプを食いました。

現在はこの構成で楽しく音楽を聴いています。

2018年1月時点のシンプル且つ最適なヘッドホン環境

…CZ-1もADI-2 Proで動かせる工夫が出来ればメインで行けそうです。
溜まっている検証事を終えたら、そこに力を入れようと思います。

(これも「圧倒的」だそうなので、「相性」としておきます。
ただ、もう私の感覚には追いつかないでしょう。絶対。)

そこまでMS202は「よく音を見通せる」ケーブルです。
おかげで機器や材の特徴と思う部分がよく浮き出て良いです。

少なくとも、私がアクセサリーに挟んでいる材を
ドライカーボンから真鍮に何故変えたのかが分からないと
真っ当に扱えないでしょう。

そうでないと、「普通で良いですが、××は圧倒的ワイドレンジでハイスピード」
程度の感想になることは容易に想像できます。

次回はスピーカーケーブルの再構築のお話です。
主にバナナプラグの変更がメインです。

【2018.03.03】使っていたDAC及びヘッドホンアンプの名称を伏せました。

#MS202のような作り込みが「技術」です。

ケーブルの構造を変えるとか導体や絶縁体の特性を変える等をすれば音は変ります。

しかし、その変化には効能と副作用があります。

得られるものと失うものをきちんと把握した上で、
それを考慮して色々なギミックを調整して合わせて製品と作ることが「技術」といえます。

FA機器や車載系では結構通じる考え方ですが、
(安直なギミック入れはデグレードや致命的な不具合につながるため。)
多くのメーカーや販売店が「高品質」と仰るオーディオ界隈で通じないのは何ででしょうね?

ちなみに「ギミック」と「技術」を区別しているのは、
TOTOのドラマー、故ジェフ・ポーカロの言葉を見てからです。

技術は、内容~ Jeff’s World_It’s Wings of Time

道具に変えれば
ギミック=特定の何かの要素(部品とか構造とか)
技術=目的に沿って構造や材を適材・適所・適量を用いてキッチリつくったもの(=内容)
と解釈しています。

音楽でも表現は違えど、似たことを考えて作られる方がいらっしゃる訳で…。

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ADI-2 Pro

 電源の変更と局所に制振対策、自分に合ったDACのフィルタ設定を行えば、
高額なDACを押しのけることすらできるレベルの音を有します。

 ヘッドホンアンプ部分も
応答性がもう少し欲しい所ですが、その分反動によるオーバーシュートがないことから、
突き詰めれば「深い低域」をだせるため、しっかりと「音楽」が聴けます。
(やっとそこまで引き出せるようになりました。前述の通りメインに昇格しつつあります。
もっと突き詰めます。)

 ADI-2 Proは検証したら特集記事を書く予定です。

 使いこなしにきちんと応えてくれる良い道具です。

RME ヘッドホンアンプ・DAC ADI-2 Pro
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HDJ-X10

 私が愛用し、改造してリファレンスで使っているヘッドホンです。

 そのままでも十分に音楽を楽しめますが、
あれこれ試行錯誤して自分なりの使い方を見つけるのも非常に楽しいヘッドホンです。

 そのうち特集記事を書きます。

PIONEER パイオニア / HDJ-X10-K ブラック DJヘッドホン
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音楽

ジェフ・ポーカロに興味を持たれましたら、
以下のアルバムをお薦めします。

TOTOだとTOTOⅣのRosannaやAfricaが有名ですが、
私はKingdom of Desireの「Gypsy Train」と「Kingdom of Desire」、「Jake to the Bone」が好きです。

KINGDOM OF DESIRE
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Seventh Oneの「Stop Loving You」や「Mushanga」、「Straight for the Heart」もなかなかです。

Seventh One
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ぜひ、言葉を実践されている方の演奏を聴いて頂ければと思います。

音声ケーブルの再考察に関するコメント:2件

  1. 山田 裕朗 says:

    ちょうどケーブルのリファインを考えているところで、この記事を拝見し、MS202のRCAを2本作成しました。
    今迄は、ベルデン88760の自作です。

    PCオーディオ、真空管プリ+パワー、自作ネットワークのJBLユニットで使用しましたが、非常にクセがなく自然ですね!
    88760よりも自分には合っています。
    また、今迄のカナレのような、クセはないがややドンくさい面もなく、非常に好感が持てました。
    こんなありきたりのコメントをしても仕方ないのですが…

    プログ主のように、プラグやハンダまでのこだわりは薄いのですが、記載されている事、非常に同意します。

    詳細な検証、ありがとうございます。
    また、このようなケーブルに巡り合わせて頂きありがとうございました。

  2. こんにちわ says:

    このエントリ参考になりました。

    僕もモニタースピーカーやヘッドホンのケーブルをMS202で作ってみたら、ナチュラルなバランスかつ現代的なクリアさもあって、とても満足しています。売ってるところが少ない点だけネックですが、値段は高くないし、良いチョイスができました。

    ありがとうございました。

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