フェルナンブコ万年筆 (中屋万年筆製)の紹介

 中屋万年筆製のフェルナンブコ万年筆の紹介です。

 2014年から始めている「杉藤楽弓社様の弓にならないフェルナンブコ材の利用方法」の製品化実績です。

はじめに

 掲載するか悩みましたが、以下の事から公開しても大丈夫と判断して掲載することにしました。

きっかけと経緯

きっかけ

 きっかけは三光堂限定万年筆として販売されていたフェルナンブコ万年筆が
2011年末に販売中止となったのがきっかけです。

 販売中止の話を聞いた時、勿体ないと感じていました。

 フェルナンブコ万年筆は材料費が杉藤楽弓社様の収益となっており、
色々な方に利益(作り手や売り手にはお金、使い手には所有価値)が回る形が
終わってしまったことが勿体ないと思ったのです。

 その上、フェルナンブコのオガ粉を利用した鞄の記事にも書いたとおり、
三光堂社長から相談を受けて「万年筆にしてみては」と提案したので尚更です。

 しかし、販売中止の話を聞いた時は万年筆コレクターに嫌気がさしていたのと、
しばらくしたらコレクターの誰かが復活させるのではないかと考えて動きませんでした。

 しかし、数年経っても何も変化が無かった上、
2014年から休職中で時間もあったため、
もう一度復活できないかと非営利(ボランティア)で動くことにしました。

交渉の経緯

 まず、三光堂社長に杉藤楽弓社様と直接交渉をする許可を得た上で、
杉藤楽弓社様へ問い合わせました。

 次に、問い合わせ後に杉藤楽弓社様へ訪問し、
万年筆となりそうなコントラバス弓にならない角材を買い付け、
万年筆の材料として使って頂けるメーカーを探すことにしました。

 三光堂限定品のフェルナンブコ万年筆は
クリップが安っぽい(実際に廉価品で使われるクリップを採用)という意見があったことを加味して
オーダーメイドで対応できれば問題が解決するだろうという考えがありました。

 そこで、プラチナ万年筆様の子会社でオーダーメイドを行っている
中屋万年筆様へ問い合わせをしました。

 問い合わせ後は中屋万年筆様へのフェルナンブコ材の紹介と
杉藤楽弓社様と中屋万年筆様との交渉の仲介を金銭交渉に入るまで行いました。

 結果、2015年6月に無事製品化しました。

交渉を振り返って

 他の「弓にならないフェルナンブコ材の製品利用」と比べて
信じられないくらいにスムーズでした。
交渉先も大手であることを加味すると尚更です。

 交渉がスムーズに成功した要因として以下の事が挙げられそうです。
製品実績や販売状況などで製品化可能と判断できたのでしょう…。

  • フェルナンブコ材が貴重な木材であったこと
  • 舶来メーカーがすでに万年筆として製品化していたこと
  • 三光堂限定万年筆として製品化した実績があり、
    どの様な販売状況だったか説明できたこと
  • 中屋万年筆様が製造と販売の両方ができるメーカーであったこと

 箇条書きにすると奇跡であったのがよく分かります…。
今回は何もかも上手く行きすぎたパターンとして捉えた方が良いでしょう。

製品の感想

 製品化に関わった万年筆なので、勿論入手しています。

見た目

 交渉に関わっていたので製品発表前に届いたのですが、驚きました。
嵌合式の木軸で来ると思っていたら、違うデザインで来たためです。

フェルナンブコ万年筆(中屋万年筆製)

フェルナンブコ万年筆(中屋万年筆製)

 デザインを調べると籠編目と同じデザインでした。
プラチナ万年筆様が昔作られていた万年筆の現代アレンジ版のようです。

 フェルナンブコ材と漆塗りエボナイト、
キャップを挿すとストレートな形状になることが筆を彷彿させ、
机上で落ち着いて書く気にさせてくれます。

 こういう派手さがなく、分かる人には分かる見た目が好きです。

機能性

 キャップを挿してもストレートな形状になることと
偏りのない重量バランスと材の質感が合わさって抜群の筆記性を誇ります。

 書き始めや返し時にストレスを感じないためです。

 というのも、万年筆の紙の上にペンを滑らすような書き方に慣れてくると
力が入ってしまう動作にストレスを感じるようになります。

 特に速く書かれる方はストレスを感じると思います。私がそうなので…。

 尚、力が入ってしまう動作として前述した書き始めと返しが挙げられます。
他にもありそうですが私の場合はこれが一番気になります。

 書き始めはペンを動かし始める時に
返しは慣性が乗ったペンを違う方向へ持って行く時に力が要るためです。

 コレクター時代は胴軸に重心があり、
全長が手に持った時に手からはみ出ない長さを理想としていました。

 今まで使っていた三光堂限定品のフェルナンブコ万年筆や

フェルナンブコ万年筆(三光堂限定品)

フェルナンブコ万年筆(三光堂限定品)

 1950年代の146(テレスコープ式)とかが当てはまります。

モンブラン 146 1950年代

モンブラン 146 1950年代

 ところが、この形状では使える人が手の大きさで限られてしまい、
手の大きな人に対応するなら別のサイズを作らなければいけません。

 一方、中屋万年筆製フェルナンブコ万年筆は長さはありますが、
ストレートな形状と偏りのない重量バランスが起因して
違和感のない持ち位置に落ち着くため、長さの問題がなくなります。

フェルナンブコ万年筆 比較

フェルナンブコ万年筆 比較

 むしろ、長くなっているおかげで手の大きさに左右されにくくなります。

 意識した設計か偶然かは不明ですが、
「この手もあったのか」と気づかされました。

 機能性の欠点としては廻り止めがないため、
油断すると転がって落下することが挙げられますが、
机でじっくりと書く用途に絞れば問題はなさそうです。

総括

 デザイン、機能性、色々な方の意見等を
一つのシンプルなデザインに集約されています。

 見事な設計としか言いようがありません。

 見た目、耐久性、機能性、どれをとっても隙がなく、
このデザインに何か付加する自体が無粋と思うためです。

 「見た目、耐久性、機能性で隙がない製品」が理想のため、
万年筆もようやく理想に合致した製品を手に入れることが出来ました。

最後に

 病気の中、意地でもやり遂げた甲斐がありました。

 まず、色々な方に利益(作り手や売り手にはお金、使い手には所有価値)が回る形を
復活させることが出来たことです。

 次に、万年筆が縁で角材以外の弓にならないフェルナンブコ材の利用方法を検討することとなり、
色々な方々に巡り会えたことです。

 これらのことが自信となったため、おかげさまで病状の回復が早まりました。

 今後は角材以外の弓にならないフェルナンブコ材の利用方法に注力します。
万年筆以外は製品化の実績がないため、手探りでやるしかありません。

 さて、紹介した万年筆に興味を持たれて購入を検討されているのでしたら、
じっくり試筆されることを強くお薦めします

 私にとって良い道具ですが、検討されている方の良い道具になるとは限らないためです。

 それに140,400円(2015年8月時点)は大金です。
どんな製品であれ、10万を超す金額の製品は慎重に検討して下さい。

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