【靴】後藤(ゴトウ)製靴所

 私がお世話になっている誂靴(オーダー靴)屋さんの
後藤製靴所を紹介します。

2017.6.5 追記

 最近、後藤さんの体調が芳しくなく、引退されるそうです。
それに伴い、新規の注文は受け付けていないとのことです。

ゴトウ製靴所とは

 山崎靴店BoleroWardrobe Shoe Serviceの靴作りの師匠が
切り盛りしているお店です。

後藤(ゴトウ)製靴所

 齢70を超えるにもかかわらず、
お弟子さんが「別格」という程の腕を持っています。

 2年前にリウマチで靴作りをやめていたのですが、
Wardrobe Shoe Service経由のオーダーを経て
今年復活されました。

靴の特徴

デザイン

 頑丈さと機能性を重視します。
歩くための道具ですから、「履きやすくて壊れにくくないと意味が無い」
ということです。

 シンプルでゴツい頑丈な靴を依頼すると、ものすごい存在感を放つ
靴が出来上がります。

 こんな感じです。

後藤製靴所 ハンドソーン 外羽根 プレーントゥ 2穴 その2

後藤製靴所 ハンドソーン 外羽根 プレーントゥ 2穴

 以上が1年半前に私がオーダーした1足目です。
後藤さんの復帰作となりました。

 完成した時は吹っ飛びましたね。

 下は1年前にオーダーした3足目。

ゴトウ製靴所 ブーツ

 尚、華奢なものも出来ます。
しかし、機能性を確保するためある程度コバは出ます。

 曰く「ハンドソーンでやる意味のない華奢な作りは嫌いだ。
それだったらマッケイで十分。」とのこと。

 要するに「雑誌でよく取り上げられるハンドソーンなのに
コバの幅が異様に狭い靴」を嫌っているのです。

 おしゃれ以前に、無意味な作りを嫌うのです。

 なお、ハンドソーンやグッドイヤーウェルトで作られた靴のコバには
以下の機能があります。

  • 歩行の安定性の確保
  • 小石よけ

 だからコバはある程度の広さが必要なのです。
おしゃれにかかわらず。

作り

 とにかく頑丈です。

 私の場合、足の踏み込む力がかなり強いせいか
安靴だと3ヶ月以内、ちょっと高めのスポーツシューズなら半年で
壊れます。

 しかし、お弟子さんである山崎靴店の靴は「キッチリ馴染む」し、
後藤さんの靴も当然馴染んで「壊れる気配がありません」。

 曰く、靴は外見より中身の方が重要とのこと。

 中身の一例としてカウンタ(踵をホールドする革芯)の作りを紹介します。

後藤製靴所 カウンターの加工

 下の分厚い革を革包丁で漉いた後、
水に浸してハンマーで叩き、繊維を緻密にして頑丈にします。

 金属加工に言い換えると

  • 分厚い金属からパーツを荒く削りだす
  • 荒く削りだしたパーツをハンマーで叩いて鍛えながら加工する

 といったところでしょうか。

 材料加工の他、釣り込み方や縫い方等
色々と中の作りがキッチリしています。

 これを知ってしまうと後藤さんとそのお弟子さんの
靴しか興味が無くなります。

 ボロボロにする靴はグッドイヤーウェルトの
既成品を買っておけば良いと考えています。

履き心地

 最初出来上がった靴の見た目でもびっくりしましたが、
履き心地も付かず離れずで長時間歩いていて全くつかれません。

 靴の中で足がどう伸縮するのかを見極めて作るためでしょう。

 この履き心地を覚えると他の靴でしばらく違和感を覚えるくらいです。

計測

 この計測は靴のイージーオーダーやフルオーダーをした人なら
かなり驚くでしょう。私も驚きました。

 足をスケッチブックにのせ、足に沿って線を引き
2箇所程、巻き尺で計測した後、足を指でなぞって(触診)終わるのですから。

 「これで大丈夫なの?」思う方が大多数でしょう。
しかし、この計測で前述したピッタリな靴ができてしまうのです。

 しかも、仮縫いなしで。

 ※仮縫い:作った靴の木型が足に合っているかどうか確認するために作る靴。

 その上、Wardrobe Shoe Serviceよりアッパーが届いた際、
足へ負担がかかる懸念点を見つけ出し、
『方向性をきちんと見出した上で』、やり直しをさせていました。

人柄

 温厚で謙虚な方です。

 話している言葉の中に時折凄い重みのある言葉があるので、
相当な苦労と経験をされてるようです。

 そのため、ちょくちょく困り事があると相談しています。
その度に私にとって的確な言葉が返ってくるのですごく助かっています。

 頭を壊してからこうして生きていられるのもこの方のお陰です。

 靴の注文の中で色々と話していても面白いですよ。

 しかし、「人としてどうだろう」という
行動や言動をする人は極端に嫌います。

 また、靴に関しても雑誌のかじった知識で「あ~だ、こ~だ」
言う人も嫌います。

 嫌いなものの話になると、一気にヒートアップします。ご注意下さい。

 尚、人として最低限の礼儀があり、職人に対する敬意があれば
全く問題ありません

最後に

 機会があれば、ぜひ注文してほしいと思う靴です。

 価格もハンドソーンで16万からと手頃です。
ホームページの価格は13万からですが、舶来物の良い革を使用すると
大体それくらいの値段になります。2014年現在、円安で舶来の革が高騰してますし…。

 それでも、下手な誂靴より破格で高品質なものが手に入ります。
初めて誂靴を注文するのであれば、尚更勧めます。

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