HDJ-X10 紹介

私がHDJ-2000発売以来使っているHDJ-2000シリーズの現行ヘッドホン、HDJ-X10の紹介です。

長い付き合いですが、分解するたびにいろいろな発見があるため、未だに作りの凄さに驚かされるヘッドホンです。

HDJ-X10とは?

Pioneer DJ(旧パイオニア DJ部門)が手掛けるDJ用ヘッドホンのフラグシップモデルです。

2008年12月発売のHDJ-2000から始まり

HDJ-2000

HDJ-2000 MK2となり

HDJ-2000MK2

HDJ-X10が最新となります。

HDJ-X10

HDJ-2000シリーズを私が愛用する理由

以下の通り「道具の目的をきちんと理解して作られているため」です。

  • 音楽を即座に捉えるための抑揚を主軸とした調和のとれた音
  • 頑丈で実用性の高い筐体設計
  • リケーブルによる保守性

前述の通り、抑揚を主軸にした調和のとれた音です。

したがって、ジャンル関係なく演奏者がどの部分に力を入れたのかがよく分かるため、
私にとっては「音楽の水先案内人」な感じです。

色々なヘッドホンを試しましたが、この音が他のヘッドホンでは表現できないため、しばらくすると自然にこれを使ってしまいます。

但し、HDJ-X10では高域の伸びを表現するために
高域のチューニングを行ったためか、高域が若干荒れます。

スタジオモニターと称した高域キンキンなものよりははるかにマシであることから、
オーディオマニアを含めて多くの人には問題はないようですが、
聴覚が過敏な方等は骨に刺さるように感じて少しつらいと思います。

筐体設計

今でも学ばされるくらいにきちんとできた筐体設計です。

このきちんとした筐体設計が、前述した音につながっているのは間違いなさそうです。

ドライバ周り

ほとんど一体成型で強度のあるドライバ周りを作っていると考えられます。

HDJ-X10 ドライバ周り

リブはハウジング接合部分を受ける役割も果たしていて無駄がなく、極めてシンプルです。

リブ~リブの間にはやや弾力のあるスポンジが貼られています。
これは逃げてきた不要な振動をスポンジ内で発生する摩擦を利用して消すことが役割と思います。

ハウジング

ドライバ周りと同様、振動がたまりやすいところに弾力のあるスポンジを貼った振動対策を行い、
グラスウールによる吸音を行っています。

HDJ-X10 ハウジング内部

なお、HDJ-2000MK2からあるチャンバー(空気室)は一体成型になっている模様。

高域の荒れはグラスウールが原因です。

吸音材を納得のいくものに変更した結果、頭に刺さるような音な音が改善されたためです。

吸音材は次機種で改善されていることに期待したいです。

ヘッドホンアーム

改造のために分解した時、「ここまでやるのか!!」とビックリしました。

HDJ-X10 アーム部分

リブを分散して立てて強度と軽量化,コストダウンまで行えているためです。

ヘッドホンアームをここまできっちり作りこんでいるヘッドホンは
今のところ見たことがありません。

改めて凄い方々が設計されたんだなと実感します。

保守性

交換ケーブルと交換イヤーパッドが用意されている点です。

着脱コネクタはmini-XLR 4pinで、ピンアサインは以下の通りです。

ピン番号 信号
1 L+
2 L-
3 R+
3 R-

AKG等のmini-XLR 3pinと互換性は亡くなったものの、
4極化したことにより以下のメリットを受けています。

  1. LRグラウンドをケーブル端(フォンプラグ側)で行えることによる、左右セパレーションの向上
  2. 4極化することにより、ケーブルによってバランス駆動へ対応が可能

個人的には昔HDJ-2000 MK2を4pin化改造して使っていましたので、その手間が省けて凄くうれしいです。

HDJ-2000 MK2 mini-XLR 4pin化改造

使いこなすために

機材

上記で説明した音であることから、「上流に引っ張られやすい」をさすため、
まずはきちんと環境を整えることが先決です。

整えた後は、音楽探しに没頭するも良いでしょうし、
自分なりの音の味付けを求めてオーディオでさまようのも良いでしょう。

以下で紹介する機器は、私がバランス駆動やハイエンドオーディオとかを経験して至った結論です。

卓上

ある程度まともなスタジオ用の機器がお勧めです。

スタジオ用の機器が置いてあるお店で色々と試聴するのが良いと思います。

私は以下を使っています。

DACをADI-2 Pro FSにしたのは、色々なDACを聞いた中で一番整った音が出ていたためです。

ADI-2 PRO FS

DACフィルター設定は「SLOW」をお勧めします。

難点はヘッドホン出力です。
シングルエンド(通常),バランス駆動共に応答性が悪く、音がぼやけるためです。

そのため、ヘッドホンアンプ兼プリアンプでミキサー「SSL SiX」を使っています。

SSL SiX

ADI-2 Pro FSから出力される一音一音を綺麗に分離してくれます。
昔信じて使ってた100~200万するプリアンプより音が素直なので、凄く重宝しています。

20万近くで高額で入出力がバランス(XLR, TRS)しかないのが難点ですが、使いこなせばお値段以上の価値はあります。

ポータブル

DAPをあれこれ選ぶより
音源を入れたmicro SDカードとヘッドホンを持ってスマートフォンを片っ端から
試聴して素性の良いスマートフォンを選んだ方が良いです。

HDJ-2000MK2 とスマートフォン

こんなんで下手な高額DAPより聴けます。(笑)

または、PCM-D100にFDKの電池突っ込んで運用するです。

PCM-D100

富士通充電池 高容量タイプ

どうしてもDAP、ということであればウォークマンくらいです。

電力効率の良いデジタルアンプのため、
3.7v リチウムポリマーという貧弱な電源でも違和感なく鳴ります。

ケーブル

ヘッドホンケーブルとラインケーブルは機器を整えるまでは、標準のケーブルを使い、
ある程度個性が分かったところで変更を行った方が吉です。

私の場合はないので作っています。

それがレコーディングエンジニアの方からのヘッドホンケーブル作成依頼につながりました。

チューニング

私は分解して、構造を理解したうえで適切と考えている材料で
チューニングしていますが、分解せずともできる簡単なチューニングを紹介します。

銅箔テープを1mm角に切り、以下の位置に貼り付けます。

HDJ-X10 ヘッドバンド部のクロストーク対策

これだけでも左右のセパレーションが改善されます。

片CHの振動がヘッドバンドを介して別CHへ伝わって音が鈍る
「振動クロストーク」(※)という現象の対策です。

写真は大きめに切っていますが、1mm角くらいが理想です。
写真位の大きいと逆効果で音が鈍ります。

かなりオカルトですが、銅箔テープは安価に手に入りますし、不満なら外したり適切な位置を探ったりすればいいので、
お持ちの方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

最後に

長年にわたり私が使っているヘッドホンの紹介でした。

使い続けて理解が深まるたびに凄さが分かるヘッドホン…。
まじめな設計は分野問わず素晴らしいなと改めて思います。

プロ用音響機器でも
「他社との違いを出さんとするためにギミックを出しすぎて道具として成り立たなくなったもの」
がちらほら出る中「使いやすい道具」を提供して頂いているのはありがたいです。

今後も私をビックリさせるような製品が出ることを期待しています。

注釈

※1:CrossZoneのCZ-1を作られた方が展示会で説明されていましたので、単語をそのまま使わせて使わせていただいています。

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ADI-2 Pro FS R Black Edition

私が使っているADI-2 Pro FSの後継DACです。

電源の変更と局所に制振対策、自分に合ったDACのフィルタ設定を行えば、
高額なDACを押しのけることすらできるレベルの音を有します。

前述の通り、ヘッドホンアンプ部分は別途設けた方が良いしょう。

…お金に余裕ができたら、乗り換えたい。

RME アールエムイー/ADI-2 Pro FS R Black Edition AD/DA コンバーター

SSL SiX

これも20万近くと高額であり、入出力がバランスしかないのでちょっと使いづらいですが、
一音一音綺麗に分離してくれるので、重宝しています。

また、出力に複数の機器をつなげられるのも魅力です。

Solid State Logic (SSL) ソリッド・ステート・ロジック/SiX 6chアナログ・ミキサー

PCM-D100

HDJ-X10をポータブルでスマートフォン以外での運用するのであれば、PCM-D100がお勧めです。

大きくやや重いですが、HDJ-X10を十分ならせるだけの出力と最も消耗しやすい電池が交換できる保守性の高さ、
ライン出力と光デジタル出力があることによる拡張性の高さが魅力です。

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