Crosszone用ケーブルの試作
ケーブル販売の記事を出す予定でしたが、Crosszone用ケーブルの試作をしました。今回はその紹介です。
また、CZ-8Aは予約をしました。GW明けに届くようですので、感想は届いてある程度聞いてから書く予定です。今回は公開された情報からの考察を記載しています。
【2021.05.21 追記】
かなり遅くなりましたが、感想を以下に公開しました。
今回の動機
Crosszoneのケーブルは作ること自体大変な上
ケーブルに癖のある音が入ってしまうとHDJ-X10改造版やHD650改造版以上にシビアに出てきてしまうためケーブルを作ることに躊躇していました。
しかし、以下の要素がそろい腰を据えて作ってみることにしました。
- ケーブル製作の試行錯誤が収束しCrosszoneで試せる段階になったこと
- 通常のヘッドホンで妙な違和感を感じるようになったこと
- CZ-8Aの発表から長期で事業を行うと判断したこと
1はケーブルに関する試行錯誤(ケーブルの加工方法、半田、フォンプラグの検証)が収まり、
ケーブルを注文されたお客様からもうれしい感想をいただけたことから
Crosszoneで今まで行った試行錯誤を試してみようと思うようになったためです。
2はHDJ-X10の改造版と自分で作ったケーブルで運用しているのですが、
最近違和感を感じ聞き疲れするようになりました。
HD650改造版と作ったケーブルでも、別のヘッドホンでも同じでした。
そうなると解消できるのはCrosszoneしかなさそうだと考え
今しっかり聞くとどうなるかを試したくなりました。
3は
粗悪品を作っていたメーカーが撤退や縮小し作れば何でも売れるという「戦後の闇市状態」を抜け、
AppleのAirPods MAXやSONYの360 Reality Audioとソフトウェアでの実現が増えアコースティックな頭外定位の意義が薄れる状況下ですので、
「今後どうするんだろ。事業の見極めには今が最適だけど、継続するのかな?」
と思っていましたが、
そしてCZ-1の発売から5年のマイルストーンとして新技術を盛り込み、
今後のクロスゾーンを牽引していくアドバンスモデル CZ-8A を開発しました。
とあったため、長期で取り掛かるという意思を感じました。
本格的にしっかりと普及するのが「戦後の闇市状態」を抜けた後で
まじめな製品を送り出してユーザーの信頼を取り戻しながら拡大する必要がある段階と思いますので
良い判断と思います。
その意気込みがうれしいし感化されたというわけです。
作ったケーブル
できあがったもの
出来上がったのがこちらです。
装着したところ
着脱プラグ以外はHD650用ケーブルと同じやり方をしています。
通常のヘッドホンケーブル2本分+αの工程でしたので作るのがかなりきつかったです。
昔に比べるときちんとしたものになりました…。
感想
標準ケーブルから(聞く限りは)音を崩すことなく
ディティールが取れるようになりました。
音の立ち上がりが水が湧き出るように荒々しすぎず大人しすぎず出てきてくれるし
残響音も沸き上がった水がふわっと広がるように静かにしっかり広がる…。
欲しかった音がでたので成功です。
それにしてもすごく心地が良い。
聞いていてついつい夜更かしをしてしまうほど。
もともとアコースティックな頭外定位のおかげで音が包み込むような感じの空気感が良いのですが、
ケーブルでディティールがよくなったので空気感がたまらなく良いんです。
売るとしたら、値段は最低でも3万(税抜)ですかね。
工程がすごく面倒くさい(最低でも通常ケーブル2本分の工程+α)ので。
着脱プラグを選定して製品化に向けて頑張ります。
Crosszoneの標準ケーブルに関して
標準ケーブルを優秀であると私は考えています。
あれでLow~Highまで破綻なく出せるためです。
若干不足気味な部分はありますが、それでもあの音はすごいです。
それと「スリーブで音を調整できる」という
スリーブを工夫する必要があることのヒントをくださったのはCrosszoneの開発者です。
優秀な技術者がコストと音質を両立させて作ったケーブルと言っていいでしょう。
そんなケーブルと比較してその音から崩すことなく拡張するような音になったことを考えると、
変な音を印加するこはなかった証明となったので自信がもてました。
CZ-8Aに対する印象
CZ-8Aは地元のオーディオ屋さんで予約しました。
期待半分不安半分といったところですが期待できる部分だけを書きます。
一つ目は波面コントロールガイドです。
構造を見てエンジニアの方がスピーカーで編み出したノウハウをつぎ込んだんだと思いました。
というのもCrosszoneの開発者がかかわったスピーカー(※1)に
Pioneer DJ XY-3Bというのがあるのですが、
その時に使っているのが羽を使って音を整える技術であったためです。
このスピーカーを試聴はしていないので、類似技術を体感できるのは楽しみです。
2つ目はCZ-1から50g軽くなった点です。
CZ-1は長時間つけていると重さがやはり気になりますので軽量化は素直にうれしいです。
3つ目は音のまとまりです。
CZ-10ではよりまとまった感じがしてよかったです。
(ただ高域がやや荒れるので私はCZ-1をメインに使っています。)
CZ-8Aはこれらも踏まえて音を作ってくると思いますので、
良くなることを期待します。
最後に
私がケーブルで探求してきたことがそう外れていない確認にもなって有意義でした。
また、なぜCrosszoneはアコースティックな頭外定位のヘッドホンを製品にしたのか
ぼんやりとわかりました。
今まで2年間、頭内定位であっても振動を上手に調整すれば「耳元に音に集めるという利点」で満足いくかもと考えて検証を進めてきました。
自分で調整したカーオーディオのスピーカーと調整したヘッドホンを交互に聞き続けていた時、
ヘッドホンが耳元で鳴っていることに違和感を強く感じるようになりました。
このことから、Crosszoneの開発者はまじめにヘッドホンを作ったらわかる人には違和感を感じるヘッドホンになってしまうことが目に見えていたと推測できます。
その原因が「物理的な頭内定位(イヤホンやヘッドホンが耳元で鳴っている事実)」と判断し、
それを解消すれば違和感をなくすことができると考えアコースティックな頭外定位ヘッドホンを作ることにしたのだと推測します。
したがって、メーカーの紹介文面に
ヘッドホン、イヤホンは、歯切れがよく迫力のある表現で音の輪郭を鮮明にしてくれます。しかし、「何かが違う」、「これは何だか疲れる」と感じたことはありませんか。「ヘッドホンで音楽をもっとスムーズに聞きたい」「ヘッドホンで音楽に包まれたい」そんな願いをかなえるCROSSZONEは、耳のすぐ近くで刺激的に鳴る音を和らげます。
と記載しているのでしょう。
2016年頃はこれだけやれるのだから普通のヘッドホンも作ればいいのにと思っていたのですが、自分で検証して腑に落ちました。
久々にきちんと向き合ってみたのですが、開発された方はすごいなと感心するばかりです。
注釈
※1:
元々TADのスタジオ用スピーカーを作られた方で、どうもパイオニア関連の企業で開発にかかわっているようです。(2017年のInter BEEのPioneer DJブースで説明員として見かけたときは驚きました。)
Crosszoneの大元の亜州光学はパイオニアと協業しているようで(プレスリリースを検索する限り解消の記事はないので協業中の模様)、その縁でできたのだろうと思います。
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私が使っているADI-2 Pro FSの後継DACです。
電源の変更と局所に制振対策、自分に合ったDACのフィルタ設定を行えば、
高額なDACを押しのけることすらできるレベルの音を有します。
ヘッドホンアンプ部分は応答性が良くないので、別途設けた方が良いしょう。
…お金に余裕ができたら、乗り換えたい。
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これも20万近くと高額であり、入出力がバランスしかないのでちょっと使いづらいですが、
一音一音綺麗に分離してくれるので、重宝しています。
また、出力に複数の機器をつなげられるのも魅力です。