ヘラクレスの栄光 サウンドクロニクルの紹介

私がSEになるきっかけとなったゲーム、
ヘラクレスの栄光のサウンドトラック
「ヘラクレスの栄光 サウンドクロニクル」の紹介です。

音楽からブックレットまで無駄なものが一切ない
ヘラクレスの栄光らしい高密度なサウンドトラックでした。

ヘラクレスの栄光とは

今は亡きゲームメーカー「データイースト」が制作していた
ギリシャ神話をモチーフにしたRPGです。

DQやFFと比べて地味ですが、初作の「闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光」には
武器防具の耐久度があったり「ヘラクレスの栄光 4」では
音源で人の歌声を表現したりと「職人魂」を感じるゲームでした。

ちなみに音源で人の歌声を表現した曲はこれです。

子供の頃、聴いた時「え?」でしたよ。本当に。
「機械で人の声を再現した」って。

その後、データイーストが倒産し、版権をパオンDPが引き継ぎ、
2008年に「魂の証明」が発売されました。

このゲームも3Dを2Dドット絵に変換する等と妙に凝った作品でした。

戦闘がタッチペンを駆使して技や魔法強化するというDSならではの
仕掛けも盛り込んでいたのですが、
ヌルサクな戦闘が主流になっていましたので、凄く不評でした。

それから続編は出ず10年が経っています。

私とヘラクレスの栄光

私がヘラクレスの栄光を知ったきっかけはいとこからファミコン本体とファミコンソフトを
譲ってもらったときに「闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光」が入っていたことです。

当時の幼稚園な私にはクリアはできませんでしたが、
なぜかDQよりも好きでした。

小学校3年になると少ないお小遣いをためて
中古のスーファミのゲームを買うようになりました。

その時に「ヘラクレスの栄光 3」を見つけて買いました。

色々とやっているうちにクリアでき、
この時のEDがなんとも言えない寂しさと温かさを持った終わり方で
クリアした夜は眠れなかった記憶があります。

その後、4が発売されたときは発売日近くに新品で買いました。

こちらもEDがなんとも言えない寂しさと温かさを持った終わり方でしたが、
3の時より印象が薄かったです。(多分、サクサク進みすぎるのが原因でしょう…。)

しかし、EDのとある神様の語りは凄く深く突き刺さるものがあり、
「やっぱりヘラクレスの栄光だな」と思える作品でした。

したがって、どちらもクリアしてもストーリーを楽しみたくて
何度も何度も遊んだのは良い思い出です。

この時にゲームを作っている人ってすごいなと思うようになり、
これをカセットに詰め込んだプログラマーのようになりたいと考え、今に至ります。

大学はSE・プログラマーになるために情報系の学科に進みました。

その時、アルバイトをするようになり、そのお金で色々とゲームを買っていたのですが、
ヌルサクな戦闘、ムービーのような演出やきれいすぎるCG、
イメージと微妙に違う声、戦闘やクエスト評価がくどいほど入る等から
自分が物語に入り込めなくなり、だんだんゲームをやらなくなっていました。

したがって、ゲーム分野以外のSEになろうと考えました。
(これは正解でした。us周期で動かすシステムに処理を組み込むことを今しているわけですから…。)

しばらくして、私が組込みSEとして就職した2008年に魂の証明が発売されました。

出るとわかった時、出ることなんて夢にも思っていなかったので、
本当に大喜びでした。

もちろん、予約して買いました。ゲーム機も一緒に…。

やってみると、魂の証明は凄く懐かしくも新鮮でした。

私が欲しがっていた「自分が本の中に入って読み進める本」を地で行っていたからです。

3Dから2Dドット絵に変換したキャラクターの豊かなモーション
(これが妙に人間臭い動きをする)と
吹き出しのセリフで声有以上に豊かな演出となり、
物語にどっぷり浸れたためです。

ストーリーの密度も数々の名言があったり
一つ一つが非常に重たかったりと3と4以上でした。

シナリオライターの14年間の人生経験の重みというのが加算されてました。

良い意味で時代に迎合しなかった
「開発者の魂」を感じてすごく満足しました。

やり終わった後にレビューなんかを見ると、
「戦闘がだるい」という評価ばかりでげんなりしました。

この戦闘システム、戦いと言うのはコントローラでピコピコやるような
楽なものではなく、凄く面倒くさいものであるというのを表現していて
妙な現実感があって私は好きだったためです。

また、「ヘラクレスの栄光のシナリオ」は内容をかみ砕く時間がかかるので、
心に浸透させるためにあの遅さが必要であると考えているのもあります。

特に魂の証明は3,4と比較するとすごく色々なものを絡めてあるので、尚更です。

したがって多くのユーザーがこの意識であれば、
今後はこのようなゲームは出ないと判断し、ゲームはぴたりとやめました。

もし再びゲームをやるとしたら、ヘラクレスの栄光の新作が出た時でしょう。

良い意味で時代に逆い、自分たちの信念を貫いた「魂のある作品」を期待したいです。

何度負けてもいいです。
そこに挑戦し続ける限りヘラクレスの栄光は『ヘラクレスの栄光』なんです。

こんな感じに思い入れのあるゲームです。

今回のサントラを買った理由

思い出を音楽から想起させることが目的です。

忙しい身なので、なかなかゲームをやる時間がありません。
そこで音楽を聴いてストーリーややっていた時の感覚を思い出そうと考えました。

ストーリーの要所要所で適切に合うようにしっかり作りこまれた音楽達です。
聴けば簡単に想起できるはずです。

しかし、昔のサントラは軒並み高値がつけられて気軽に買えるものではありません。
(2018年6月時点で4と2のサントラがAmazonの中古で13,000~14,000円です。)

今回のサントラが出るという噂は1~2年前に聞いていたのですが、
なかなか出てきませんでした。

最近、調べていたら発売されるということでしたので
すぐに予約を入れました。

これは逃したくありませんでした。

サントラの内容

内容は公式の紹介を見ていただくとして

概要を簡単に説明すると以下の通りです。

  • 1~4、動き出した神々の5タイトルの曲を収録
  • ギリシア回想録に3のデモ音源を加えて追想録として収録
  • ギリシア回想録内の「遥かなるアトランティス」に加えて「失われた時は何処に」と「アトランティスの子供たち」のアレンジを収録

このようにかなり豪華な内容です。

値段は8000~9200円でサントラしては高めですが、
前述の通り中古のサントラを2つ集めただけでも26,000円と考えると
破格といえます。(なお、ギリシア回想録は2018年6月時点で40,000円…)

感想

届いてリッピングして試聴しました。

ゲームをやめてから粗方処分してしまったので、
残っていないだろうと思ったら、3のカセットだけ残っていました。

ヘラクレスの栄光 サウンドクロニクル

総評は「音楽からブックレットまで無駄なものが一切ない
ヘラクレスの栄光らしい高密度なサウンドトラック」でした。

やっぱりやった記憶が蘇る

後述の「きれいな音質」に慣れると
昔遊んだ記憶がよみがえります。

戦闘曲なんて効果音付きで思い出すほどです。

「ああ、ここでカラクリを解くのにさんざん苦労したよなぁ…」
と聴いていてしみじみしています。

特に3の「主人公の取り戻した記憶が流れるシーンの音楽」は
「これ衝撃的だったなぁ」とつくづく。

多分、あのシーンで「え?」と思った方は結構いるのではないでしょうか?

こうして手元に音楽を置いていつでも聴けるというのは心が落ち着きます。

改めてサウンドプログラマーと作曲者の凄さを感じることができる音質

さて、「実機から高音質に出力して録音」と書かれていますので、
少し感想を書きます。

左右のセパレーションが良く、音の抜けも良いです。
特定音域の破綻はもちろん、音が鈍っているというのは感じられませんでした。

ただ、私が子供のころは貧弱な環境でやっていたせいか若干違和感がありましたので、
私の様に貧弱な環境(確かRF OUTでモノラルのTVに接続等)で
やっていた方は違和感を感じるかもしれません。
(数年後、お年玉でステレオ出力のTVとAVケーブルを買ったのは良い思い出です。)

しかし、しばらくすると違和感を感じなくなりましたので、
わかっている方がきちんと仕事をしたと思います。

というより、ヘラクレスの栄光という
密度の高いゲームを好んでいたユーザー層です。

中途半端な仕事をしたらすぐに見抜かると思いますので、
やっている方もすごく緊張して仕事していたんだろうなと思います。

この辺は「さすがヘラクレスの栄光」と思います。

また、高音質化のおかげで
「なんでヘラクレスの栄光の音楽はしっくりくるのだろう」
と子供時代に思っていた疑問が解消されてスッキリしました。

どの音楽も電子音臭さがなく、
音楽が自然に耳にはいるように工夫されていたことが分かったためです。

印象的なのはパートの使い方です。

他の音源の鳴りをうまく利用して
ブラス等で出る荒れをうまくキャンセリングしているためです。

しかも各音源の「音域」と「音が伸びる時間」を計算してある感じで
丁度良いタイミングで他の音源による荒れ防止がかかり、自然に聴こえます。

さらに、音源単体に関しても相手が聴きやすいように荒れる部分が
荒れないように調整されている感じです。

ブックレットのサウンドプログラマー兼作曲者の濱田さんのライナーノーツに
「後半では音源によって効果的になる音域~」という記述があるので、
計算されて作られているという推測はそう間違っていないと思います。

SFCの音源用チップに関するWikipediaの記事を見ると、
性能を引き出すにはドライバの改造や自作ができるプログラマーの腕と
対応できるコンポーザーの腕(多分、音源の特性を理解した曲作り)が必要とあるので、
こうした工夫が「高い技術力」と言えそうです。

その技術力の高さを象徴しているのが前述した「ぜんぶ好き」で
楽曲に関して「SFCで初めて歌を歌わせたのではないか」と
濱田さんのライナーノーツに嬉しそうに書かれています。

自分の技術に驕らず誇る技術者の鏡と思います。

曲をうまく入れ込んだ作曲者と技術者の凄さを実感しました。
子供のころにプログラマーにあこがれを抱くだけのことはありました。

演奏でもこだわりを見せてくれるアレンジ版

GAMADELICのアレンジ版が収録されているDISC6ですが、
3曲しかないもののこだわって作られています。

まず、「Lost Time Elegy (原曲:失われた時は何処に)」。

JAZZアレンジされていて非常に心地の良い一曲です。
食後にウィスキーをストレートで飲みながら楽しんで聴いています。

曲単体だけでなく、少し他の曲(買って聴きとってね。)も混じってて
ずっと聴いていると「だからこの曲を少し入れ込んだのか」と勝手に思って
悦に浸りながらお酒が進みます。

良い曲ですよ。お酒を飲みながら聴ける曲というのは。
酔いを妨げずに心地よく聴けるということですから。

次に「アトランティスの子供たち’18 (原曲:地平線の彼方 / ぜんぶ好き)」。

良いボーカルです。優しく温かい良い歌い方です。
上手さを誇らないところもGoodです。

ボーカルでこういう方意外と少ないんです…。

この方、「魂の証明」のOPのコーラスも行っていたらしく、
聴くと「ああなるほど。」と思います。

4は初っ端から雪原に犬の体で投げ出されるわけですが、
そんな寂しさを持たせつつ安心感というか温かさを持たせているのが、
「地平線の彼方」と思っていますので、
ピッタリなボーカルの選定だなと思いました。

最後に「遥かなるアトランティス (原曲:アトランティスの思い出)」。
(こちらはリマスタリング音源。)

初めはベースソロ(フレットレスベースかな? 多分)で「今は亡き故郷」を表現して
フルートやギターが加わりだんだんと思い出が鮮明になるのを
表現しているのが良いです。

…故郷の壁に辿り着いたプラトンの心境を音楽にするとこんな感じなのかもしれません。

読み応えのあるブックレット

ブックレットには作曲者の方たちとシナリオライターの方の
ライナーノーツがあり、これが凄く見どころがあります。

私は濱田さんのライナーノーツがとても面白く感じました。
兼サウンドプログラマーの方なので、組み込んでいるときの
苦労話は分野は違えども分かるものがありました。

それから、シナリオライターのブックレットは
すご~く濃い内容です。

その中でも2がなんでDQ風になったのかが分かるエピソードがあったのですが、
読んでいて、どの世界でも「システムの流用と改造」って難しいんだなあと
SEとして分かるものがありました。

(結局、若干楽になるのですが、あれやこれややるので思ったより楽にはなりません。
ある程度作られたシステムの流用と改造だと特に。)

それと各曲のクレジットは必読ものです。

4のサウンドって酒井さんでしょ?と思ったら、
色々な方が曲を作っていて、「え?あの曲、この人なの。」という
驚きや発見があり、凄く新鮮でした。

こんな感じでじっくりと目を通したブックレットはこれが初めてです。

最後に

リリースをしてくださった方々に心から感謝申し上げます。

有難うございます。

聴きどころ見どころ満載のサウンドトラックBOXでした。

過去にやったことのある方にはお勧めのサントラです。

開発の苦労をライナーノーツから把握しながら聴くと
より曲の重みが増すでしょう。

また、良い曲ばかりですのでやったことのない方も
手に取っていただいて損はないと思います。
(そこからヘラクレスの栄光シリーズで遊んでいただければなお嬉しいかな…)

これで心残りなのが以下2点になりました。

  • 魂の証明のサントラ
  • ヘラクレスの栄光の新作

魂の証明の曲もすごくこだわって作られているので
手元にほしいです。

あとは新作…。どんな内容であれ、
じっくり作ったものが出てくれれば満足です。

出れば「そのためだけに」ハードを買ってじっくりやります。

無論、ゲームをする時間も意地で作ります。

それから、7/21(土)に岡崎でヘラクレスの栄光3の作曲者である桃井聖司さんのユニット
MOMO-TEN」の公演が行われるので、岡崎の会場で予約をしました。

行って楽しんできます。

実のところ、一番の驚きだったのが
「私がSEになりたいと思うほどあこがれていたゲームの作曲者が同じ岡崎市出身だったこと」
です。

こうして知ることができたし、
何よりmookiさん以外で
行きたいLIVEが増えたのですごくうれしいです。

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ヘラクレスの栄光 サウンドクロニクル

紹介の通りです。音楽からブックレットまで一切の無駄がない
素晴らしいサウンドトラックです。

やった方もやっていない方も一度お手に取っていただけると幸いです。

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